不動産投資は「規模」がものをいう?スケールメリットがもたらす「5つの恩恵」とは
前回と少し似たような内容になっていますが少し補足します。不動産投資をスタートしたばかりの頃、多くの方が「まずは1棟、うまくいけばそれで満足」と考えるのは自然なことです。しかし、実際に投資を続けていくと、ある段階でこうした気づきがあります。
「1棟目では手元にほとんど現金が残らない」
「次の物件を買いたいけれど、融資の条件が良くならない」
「管理費や修繕費が思ったよりかかる…」
このような悩みは、実は「規模が小さい」ことに起因するケースが非常に多いのです。
つまり、不動産投資においては規模の拡大が単なる“物件数の増加”ではなく、「利益体質を強くするための戦略的手段」だということ。本記事では、不動産投資における「スケールメリット」がなぜ重要なのか、どのような恩恵があるのかを、現場感を交えながら詳しく掘り下げていきます。
規模の拡大=利益率の改善につながる理由
「規模を拡大する」と聞くと、単に物件数を増やして家賃収入を増やすというイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし、スケールメリットの本質はそこではありません。
重要なのは、「1棟では実現できなかった効率のよい経営が、複数棟を持つことで可能になる」という点にあります。では、具体的にどのようなメリットが得られるのか、順を追って見ていきましょう。
1. 管理コストの削減と交渉力の向上
1棟目を管理会社に委託する場合、提示された管理料(例:家賃の5%〜7%)をそのまま受け入れるケースがほとんどです。まだ信頼関係もなく、交渉材料もないため、初回は「言い値で契約せざるを得ない」ことが多いのです。
ところが、2棟・3棟と物件数が増え、管理戸数が10室、20室、30室…と増えてくると、状況は一変します。
- 管理会社「◯◯さん、これだけお預かりしているので管理料を少し下げましょうか」
- オーナー側「そろそろ一括で管理料の見直しをお願いしたいのですが…」
このように、管理料の見直し交渉が可能になるだけでなく、対応の優先順位が上がったり、修繕提案の質が向上したりします。
実際、1棟目では月額8万円の管理費だったものが、規模拡大後に6万円台まで下がった例も少なくありません。
つまり、数を持つことで「ただのお客」から「重要なクライアント」になるというわけです。
2. 修繕費・リフォーム費用の抑制と連携
規模が拡大すると、自然と修繕やリフォームの頻度も増えます。
一見すると支出が増えるように思えますが、実はここにもスケールメリットが潜んでいます。
業者との関係性が深まることで、次のような取引が可能になります:
- クロス貼替や設備交換を同じ業者にまとめて依頼→ボリュームディスカウント
- 「◯◯さんの物件なら在庫があるから安く仕上げられますよ」といったコスト調整提案
- 急ぎの修理にも優先対応してくれる関係を築ける
また、複数棟のリフォームスケジュールを見ながら効率的な修繕計画(長期修繕スパン)を組むことも可能になり、長期的には支出の平準化=キャッシュフローの安定に貢献します。
3. 融資条件の改善と“金融機関からの格付け向上”
金融機関は、投資家の規模と実績を慎重に見ています。
1棟目の融資は「試し」、2棟目からが「評価対象」となることも珍しくありません。
- 毎月安定した返済ができている
- 空室対策や管理にしっかり取り組んでいる
- キャッシュフローも黒字で維持している
こうした実績を2年、3年と積み上げていくと、金融機関側の見方が変わってきます。
「この人なら、もう1棟購入しても大丈夫」
「次は共同担保があれば融資枠を広げよう」
「法人スキームも視野に入れた融資を提案しよう」
このように、実績を武器に融資条件が柔軟に・有利に変化していくのです。
金利が下がったり、自己資金比率が小さくなるだけで、手残りの収益に大きな差が出ます。
4. 法人化による戦略的な節税と資産管理
不動産経営が一定規模になると、個人での所得税の累進課税が重くのしかかってきます。
そこで検討されるのが、法人化による節税と所得分散です。
法人化のメリットには以下のようなものがあります:
- 税率のコントロール(法人税は中小企業なら約23%)
- 家族を役員として登用 → 給与で所得分散
- 退職金制度の導入(将来の出口対策にも有効)
- 法人保有物件と個人保有物件を分けて管理・戦略的運用が可能
これらは1棟だけではなかなか実現が難しい戦略ですが、規模があるからこそ採れる選択肢でもあります。とくに所得が年間900万円を超えてくる段階では、法人化による税率の最適化が強い武器になります。
5. 経営体質の強化と長期安定への備え
規模を拡大していくことで、自然と経営目線が養われていきます。
最初は「空室が出たらどうしよう」「修繕が心配」と不安だった方でも、複数棟を管理するうちに次のような視点が育ちます。
- 「この地域は供給過多だから家賃を維持するには+αが必要だな」
- 「退去時期が重なる物件は修繕スケジュールを調整しよう」
- 「この物件は築20年だから、次の10年で出口を考えるべきだ」
こうして、単なる物件保有者から“資産管理者”へと進化していくのです。
経営の目線が身につくと、突発的なトラブルにも冷静に対応でき、事業としての不動産投資の質が高まります。
まとめ:規模は力。スケールメリットが経営を支える土台になる
不動産投資は、決して「数を競うゲーム」ではありません。
しかし、数を持つことでしか得られない視点・利益・関係性が確実に存在するのもまた事実です。
- 管理コストの削減
- 修繕費用の効率化
- 融資条件の改善
- 節税・法人化戦略の実行
- 経営意識の向上と事業としての成長
これらすべては、規模の拡大によって手に入る“本物の経営メリット”です。
もしあなたが1棟目を順調に運営できているのであれば、ぜひ「次の1棟」がもたらすスケールの可能性にも目を向けてみてください。
不動産投資は、一棟よりも二棟。二棟よりも戦略ある複数棟。
その一歩が、長期にわたる収益と安定経営の礎になります。