経営を“人”に託せる状態にできているか? ─ 家族や後継者に迷いなく引き継げる仕組みづくり ー

こんにちは。大家さん応援隊スタッフです。
大家さんや不動産投資家の方とお話をしていると、「今の家賃収入が順調だから安心している」という声をよく聞きます。
しかし、不動産経営は“いま稼げているかどうか”だけで完結するものではありません。
むしろ本当に大切なのは、自分がいなくなった後でも家族が安心して不動産経営を続けられるかどうかです。

せっかく築き上げた物件や仕組みも、「自分にしか分からない状態」で終わってしまえば、家族にとっては負担になりかねません。
そこで今回は、なぜ“人”に託せる体制が必要なのかを明らかにした上で、実際に準備すべきポイント、よくある失敗例、そして今日から始められる小さな一歩までを整理しました。

目次

  1. なぜ“人”に託せる状態にする必要があるのか?
  2. 家族・後継者が困らないために準備すべき3つのこと
    – 経営情報の「見える化」
    – 相続・税務対策の「仕組み化」
    – 人への「委任・協力体制」
  3. 引き継ぎ準備でよくある失敗例
  4. 今日から始められる小さな一歩
  5. 【まとめ】“自分がいなくても回る経営”をつくる

1. なぜ“人”に託せる状態にする必要があるのか?

不測の事態は必ず訪れる

不動産経営は長期にわたる事業です。築年数が経てば修繕が必要になり、ローンは20〜30年以上続くこともあります。
その間に、病気や事故、判断力の低下など、本人が経営に関われなくなる可能性は誰にでもあります。

準備がなければ、家族は「どこから手をつければいいのか」さえ分からず、返済や入居者対応が滞って経営が一気に崩れます。

資産が「負担(負債)」に変わるリスク

不動産は家族にとって資産であるはずですが、引き継ぎ準備をキチンとしていないと“借金付きの負債”にしか見えないこともあります。
ローン残債や相続税を知らないまま引き継げば、「突然大きな借金を背負った」と感じてしまうでしょう。
資産を残すつもりが、逆に「負担(負債)を残す」という結果になりかねません。

経営を“仕組み”にして強くする

経営を「自分がやるから回る」状態から、「仕組みとして回る」状態にすることが、不動産経営の最終形です。
引き継げる仕組みが整っていれば、本人が関われなくなっても、家族や専門家が支えながら継続できます。
つまり、託せる体制は家族の安心だけでなく、経営そのものを強くする手段なのです。

2. 家族・後継者が困らないために準備すべき3つのこと

① 経営情報の「見える化」

大家さん本人の頭の中にしかない情報は、家族にとっては“存在しない”のと同じです。
物件一覧、入居者リスト、借入情報、契約先、修繕履歴などを誰が見ても分かる形で整理することが第一歩です。

表計算ソフト(Excelなど)やクラウドサーバにまとめても良いですし、A4紙1枚に要点を記すだけでも大きな違いがあります。

② 相続・税務対策の「仕組み化」

不動産は規模が大きいため、税金がネックになりがちです。

  • 相続税の試算
  • 法人化や信託による承継方法の検討
  • 納税資金の準備(保険や積立)
  • 遺言や契約による明文化

これらを進めておけば、相続時に「払えないから物件を売る」という事態を避けられます。
※専門家に相談しましょう!

③ 人への「委任・協力体制」

どんなに情報や仕組みを整えても、実務を知らない家族は不安を抱えます。
だからこそ「誰に相談すればいいか」を明確にすることが不可欠です。

管理会社、税理士、司法書士、弁護士 ─ これらの専門家をリスト化し、家族に紹介しておけば安心です。
困ったらまずこの人に電話する」という道筋をつけるだけでも、家族は迷わずに済みます。(家族は何も分かっていません)

3. 引き継ぎ準備でよくある失敗例

ここで少し、ありがちな失敗例を紹介しましょう。
実はこれから紹介する例は特別な話ではなく、多くの大家さんが陥りがちな“あるある”なのです。

失敗例① 情報が頭の中だけにある

本人は「自分が全部分かっているから大丈夫」と思っていても、家族はゼロからのスタートです。
銀行や管理会社の連絡先すら分からない ─ そんな状態で経営を続けるのは不可能です。

失敗例② 節税に偏りすぎて複雑化

「節税のために法人化したけど、家族は何の会社か分からない」
「信託契約を組んだけど仕組みを理解していない」
節税を優先した結果、かえって家族が対応できなくなる例は珍しくありません。

失敗例③ 後継者との意思疎通不足

「子どもが継ぐだろう」と勝手に思い込んでいたら、本人は全くその気がなかった。
不動産は何もしなければ共同相続になりやすく、いざという時に複数人で意見が割れるとトラブルが深刻化します。

失敗例④ 専門家との連携不足

税理士や司法書士に相談せず、自己流で進めてしまうと、家族は相続時に途方に暮れます。
普段から専門家とつながっていれば、引き継ぎ時もスムーズに対応できるのです。

👉 失敗の根本原因は「準備不足」と「後回し」。逆に言えば、早めに準備すればほとんど防ぐことができます。

4. 今日から始められる小さな一歩

「引き継ぎ準備」と聞くと面倒で大がかりに感じますが、実際は小さな行動から始めれば十分です。

ステップ① 物件リストを作る

所在地・築年数・家賃設定を一覧にするだけで、家族は全体像を把握できます。

ステップ② 借入情報を整理する

どの銀行に、残債がいくらあるのかを明記しましょう。
返済スケジュールが分かれば、家族は安心です。

ステップ③ 専門家リストを渡す

管理会社、税理士、司法書士、弁護士の連絡先を一冊のファイルにまとめておきましょう。
「困ったらこの人に連絡する」という安心感は計り知れません。

ステップ④ 相続税の簡易シミュレーション

税理士に依頼すれば現時点での相続税額がわかります。
数字が出ることで、準備の必要性を家族と共有できます。

ステップ⑤ 家族に経営の全体像を説明する

「月にこれくらいの家賃収入があって、返済はこれくらい」
「この物件は築古だから修繕が近い」
ざっくりでも伝えておけば、家族は迷わず動けます。

5. 【まとめ】“自分がいなくても回る経営”をつくる

不動産経営の本当のゴールは「収益」ではなく「継続」です。
そして継続のためには、家族や後継者に安心して託せる体制が欠かせません。

  • 情報を「見える化」する
  • 税務・相続を「仕組み化」する
  • 専門家への委任体制を整える
  • 小さな一歩を今日から始める

これらを実践することで、“自分がいなくても回る不動産経営”が実現します。

家族にとって安心であることはもちろん、大家自身にとっても「これで大丈夫だ!」という心の余裕につながります。
不動産経営を資産として未来につなげるために、ぜひ今から準備を始めてましょう。