~ 大家さんの三大不安 ~ 第2回

修繕・原状回復で泣かない!想定外の出費を防ぐ仕組み
こんにちは。大家さん応援隊スタッフです。
前回の記事では、賃貸経営における “永遠のテーマ ”空室問題についてお話しました。
今回は、もう一つの大きな不安、「修繕・原状回復」に焦点を当てます。
このテーマは、実際の相談件数でも非常に多く、
「想定外の出費で一気に資金繰りが苦しくなった」
「退去のたびに毎回見積もりが高くて悩む」
といった声を数えきれないほど耳にします。
賃貸経営において、修繕費は “避けて通れないコスト” である一方、
「コントロールできるコスト」でもあります。
今回は、「泣かない修繕・原状回復」の考え方と、今日からできる備えの仕組みづくりをお伝えします。
1. 修繕・原状回復に潜む「3つの落とし穴」
修繕や原状回復の相談には、ある共通点があります。
それは、「急に発生して慌てて決めてしまう」ということ。
想定外の出費に直面すると、心理的にも冷静な判断ができず、
結果的に“言われるままの金額”で発注してしまうケースが多いのです。
特に注意したいのは次の3つです。
- 退去時の原状回復費用が高額化するケース
→ クロス、床、設備交換など、毎回積み上がると大きな負担に。 - 突発的な設備トラブル
→ 給湯器・エアコン・水漏れなど、急を要する修理は高くつく。 - 長期的な大規模修繕のタイミング
→ 屋上防水・外壁塗装・給排水管など、築20年を超えると一気に集中。
つまり、修繕費用には「突発型」と「周期型」があり、どちらにも“予測と備え”が不可欠です。
2. 「予測できる出費」に変える考え方
修繕費を“突然の出費”と捉えるのではなく、「将来発生する経営コスト」として計画的に扱うことがポイントです。
● 長期修繕計画を持つ
建物の築年数ごとに、10年先を見据えて「どんな修繕が発生するか」を想定します。
たとえば以下のような目安です。
| 築年数 | 主な修繕項目 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 〜10年 | 給湯器・水栓・クロス補修 | 10〜50万円 |
| 10〜20年 | 外壁塗装・屋上防水・共用部照明 | 100〜300万円 |
| 20年以上 | 給排水管交換・屋根・設備更新 | 300万円〜 |
このように、修繕を“周期的イベント”としてスケジュール化することで、
突発ではなく“予定された支出”に変わります。
3. 「積立」こそ最大のリスクヘッジ
修繕費を抑える最も確実な方法は、
「使う時に慌てないように、あらかじめ貯めておく」ことです。
- 家賃収入の3〜5%を毎月「修繕積立金」として別口座にプール
- 大規模修繕を見据えて、年単位で積立ペースを調整
実際に修繕の見積もりが来たとき、
「支払いのために借入が必要になる」状態は、経営のリスクを大きく高めます。
積立があることで、冷静な比較検討ができる余裕が生まれます。
また、積立金を「毎月の経費」として”組み込む”ことで、
帳簿上もキャッシュフロー上も安定感が増します。
4. 見積もり比較の“基本ルール”
修繕を依頼する際、必ずやるべきなのが見積もりの比較です。
ただし、「数社取れば安心」という話ではありません。
重要なのは、内容を“同じ条件で比較する”ことです。
- 使用材料(グレード)
- 施工範囲
- 保証期間
- 追加費用の有無
この4点が揃っていない見積もりを比較しても、
「安い/高い」の判断はできません。
また、見積もりの段階で写真や説明を丁寧に提示してくれる業者は信頼性が高いです。
逆に「口頭で済ませようとする」「詳細が書かれていない」場合は注意が必要です。

5. よくある“泣きポイント”と回避策
実際の現場で「しまった」と感じる事例は少なくありません。
以下は代表的なケースとその対策です。
| 失敗パターン | 結果 | 回避策 |
|---|---|---|
| 退去時に一括で修繕を行い高額に | 短期的に資金圧迫 | 定期点検・部分修繕で分散化 |
| 業者任せで内容を確認せず発注 | 過剰工事や不要交換 | 写真確認・内訳説明を必ず依頼 |
| 火災保険を活用しなかった | 実費負担が増大 | 保険適用範囲を定期的に見直す |
「知らなかった」「急いでいた」。
この2つが重なると、修繕コストは簡単に2倍になります。
焦らない仕組みづくりこそ、最大の節約です。
6. 原状回復でモメないためのポイント
退去時の原状回復は、入居者とのトラブルが最も多い分野の一つです。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、
負担区分の基本が明確に定められています。
ポイントは次の3つ。
- 入居前の状態を記録する(写真・チェックリスト)
- 通常損耗(経年劣化)は大家負担
- 入居者負担は「故意・過失・善管注意義務違反」に限る
これを理解していないと、退去後に見積もりを見て
「どこまで請求できるのか分からない」という混乱が生じます。
トラブルを防ぐには、入居時点での情報共有と記録が何より重要です。
7. 修繕を「コスト」ではなく「投資」として捉える
修繕は、単なる支出ではありません。
実は“入居率を高めるための投資”でもあります。
たとえば、外壁を塗り替えることで見た目の印象が大きく改善されれば、
内見数が増え、家賃を下げずに決まる確率が上がります。
設備更新を定期的に行えば、トラブルも減り、クレーム対応コストも削減できます。
つまり、修繕にお金をかけることが、長期的には経営の安定につながるのです。
支出を「一時的な痛み」と考えるのではなく、
「資産価値を維持し、信頼を積み上げるための戦略」として見直す視点が大切です。

8. まとめ 〜備えあれば憂いなし〜
修繕・原状回復の不安は、大家業を続ける限り避けられません。
しかし、事前の備えと仕組み化によって「不安」は「管理可能なリスク」に変えられます。
- 長期修繕計画を立てる
- 修繕積立を続ける
- 見積もりは条件を揃えて比較する
- 原状回復はルールを理解して対応する
この4つを押さえるだけでも、突発的な支出に慌てることはぐっと減ります。
「泣く修繕」から「守る修繕」へ。
経営の安定を支えるのは、“準備力”です。
📍次回予告
▶︎ 第3回:「金利上昇・融資環境の変化にどう備えるか?」
〜数字に強い大家になるための金融リテラシー〜