~大家さんの三大不安~第3回

金利上昇・融資環境の変化にどう備えるか?

〜数字に強い大家になるための金融リテラシー〜

こんにちは。大家さん応援隊スタッフです。

これまでのシリーズでは、

  • 第1回:空室が埋まらない不安
  • 第2回:修繕・原状回復の出費リスク

について解説してきました。

今回は「大家さん三大不安」の最終回、
金利上昇と融資環境の変化にフォーカスします。

「金利の話は難しそう…」と思う方も多いかもしれませんが、
今の時代、大家業は“金融リテラシー”なしでは成り立ちません。
なぜなら、金利ひとつで年間キャッシュフローが数十万円単位で変わるからです。

この記事では、今まさに注目されている金利動向を踏まえ、
「何を意識し、どう備えるべきか」をわかりやすく整理してお伝えします。

1. 金利が上がると何が起きるのか?

多くのオーナーが利用しているのは「変動金利型」のローンです。
金利上昇が進むと、返済額が増えるだけでなく、
“返済比率(返済額 ÷ 家賃収入)”が上がり、経営全体を圧迫します。

たとえば、借入5,000万円・金利1%・期間20年の場合、
金利が0.5%上がるだけで、年間返済額は約13万円増加します。

1棟だけならまだしも、複数物件を所有している場合は、
「微増」の積み重ねが大きなダメージになるのです。

しかも、家賃が上がりにくい環境では、
金利上昇分=そのまま利益減少を意味します。

2. 金融機関の“目線”も変わりつつある

近年、銀行や信用金庫の融資姿勢は徐々に変化しています。

  • 年収・資産背景の審査が厳しくなった
  • 返済比率(DSR/LTV)の基準が上がった
  • 資産管理法人への融資は慎重になった

以前は「不動産投資=融資が出やすい」時代でしたが、
今は「融資がつく人」と「つかない人」の差が明確になっています。

特に、銀行はキャッシュフローの安定性借入バランスを重視します。
つまり、融資を受け続けるには、
「数字を読めるオーナー」であることが求められる時代なのです。

3. “数字に強い大家”になるための3つの視点

① キャッシュフロー感覚を身につける

単に“手残り”を見て安心するのではなく、
金利上昇リスクを加味した収支シミュレーションを常に意識しましょう。

たとえば、

  • 現在の返済額(元利均等)
  • 金利+0.5%、+1.0%、+1.5%時の返済額
    を一覧化するだけでも、「どこまで耐えられるか」が見えてきます。

また、管理費・修繕積立なども含めた「実質手残り」を把握しておくことで、
いざというときの意思決定が早くなります。

② 銀行との関係性を“資産”として育てる

融資は「条件」ではなく「関係」で決まる時代です。
同じ物件・同じ条件でも、担当者との信頼関係次第で結果が変わることがあります。

信頼を築くために意識すべきは次の3点です。

  1. 決算・確定申告を丁寧に整理して提出する
  2. 返済実績・賃貸経営報告を定期的に共有する
  3. 短期的な借入目的を明確に伝える

銀行は、“数字を理解し、誠実に経営している大家”を好みます。
融資を「お願いする関係」から「パートナーとして共に進む関係」へ。
これが次の融資を引き出す最大のカギです。

③ 金利タイプの選択を戦略的に

「固定か変動か」これは永遠の議論ですが、答えは一つではありません。
重要なのは“戦略”です。

タイプ メリット 注意点
変動金利型 金利が低く、返済額が抑えられる 上昇時に返済額が急増するリスク
固定金利型 返済額が一定で安定する 金利が高く設定される傾向

おすすめは、ポートフォリオで考えること。
複数物件を持っている場合、

  • 一部を固定
  • 一部を変動
    とすることで、リスクを分散できます。

また、既存ローンの借り換え(リファイナンス)も有効です。
ただし、手数料・違約金・再審査条件などを総合的に判断しましょう。

4. 「備える大家」と「後悔する大家」の分かれ道

金利上昇は、突然やってきます。

しかし、“備えがある人”は慌てません。

私が見てきた中で、金利変動期に成功しているオーナーには共通点があります。

  • 金利上昇を前提に、常に複数の返済シミュレーションを持っている
  • 繰上返済や積立によって、元本を早めに減らしている
  • 銀行担当者と日常的にコミュニケーションを取っている

一方で、「金利なんて上がらないだろう」と油断していたオーナーは、
返済負担が増えても動けず、手残りが一気に減るケースが多い。

つまり、差を生むのは“知識”ではなく“準備”です。

5. 融資環境の変化に柔軟に対応する

2025年以降は、金融機関による“選別の時代”がより進むと予想されます。
特に、法人化している大家さんに対しては、
「経営者としての説明力」「資金管理の明確さ」が問われるようになります。

対応のポイントは3つ。

  1. 資金繰り表・収支管理表を常にアップデートする
  2. 不動産ポートフォリオを定期的に見直す(収益性・出口戦略)
  3. 複数金融機関と接点を持つ(選択肢を広げる)

銀行から見て“安心して貸せる大家”であること。
これが今後の時代、最大の防衛策になります。

6. 数字を味方にするということ

金利や融資の話になると、「難しい」「銀行任せでいい」と感じる方もいます。
しかし、数字は決して敵ではありません。
むしろ、経営の未来を見せてくれる羅針盤です。

キャッシュフロー・返済比率・利回り・自己資本比率…。
これらの数字を理解できるだけで、
“なんとなくの経営”から“戦略的な経営”へと変わります。

数字を味方につけた大家さんほど、
不況や金利上昇局面でも慌てずに前を向けるのです。

7. まとめ 〜変化を恐れず、備える大家に〜

金利上昇も、融資環境の変化も、コントロールすることはできません。

しかし、備えることはできる

そして、その備えは「知識」から始まります。

  • 金利が上がったら、返済はどう変わるのか?
  • もし融資が止まったら、資金繰りはどう回すのか?
  • 銀行に何をどう説明できるか?

これらを「いま」から考えておくことで、
数年後の自分を大きく守ることができます。

賃貸経営は、建物だけでなく“お金の流れ”をマネジメントする事業です。
空室・修繕・金利——三大不安を理解し、構造的に備えることで、
どんな環境でも強くしなやかに経営を続けられるはずです。

📍次回予告(シリーズ総括)
▶︎ 特別編:「三大不安を乗り越えた大家たちの実践例」
〜不安を“学びと成長”に変えたリアルストーリー〜をお送りします。