大家さんのための相続税対策入門【第5回・最終回】

こんにちは。大家さん応援隊スタッフです。

これまでの連載では、

  • 第1回:「なぜ大家さんに相続税対策が必要なのか?」
  • 第2回:「そもそも相続税対策は本当に必要なのか?」
  • 第3回:「大家さんがまずやるべき相続税対策の3つの行動」
  • 第4回:「相続トラブルを防ぐための実践事例」

と、順を追って大家さんの相続税対策を整理してきました。

最終回となる今回は、締めくくりとして 「相続税対策を不動産経営の戦略として考える」 という視点をお伝えします。

目次

  1. 相続税対策を「節税テクニック」で終わらせない
  2. 不動産経営と相続税対策は表裏一体
  3. 戦略的に取り組む3つの視点
    • 法人化によるスムーズな承継
    • 生前贈与や建替えで資産を最適化
    • 借入を活用した事業的相続税対策
  4. ケース紹介:経営戦略としての相続税対策成功例
  5. まとめと連載の締め:大家業は「資産を育て、家族に残す事業」

1. 相続税対策を「節税テクニック」で終わらせない

相続税対策というと、どうしても「税金を減らす裏ワザ」的なイメージを持つ方が多いです。
しかし、ここまで読んでいただいた皆さんには、もうお気づきかと思います。

相続税対策は単なる税金対策ではなく、不動産経営を次世代につなぐ経営戦略そのものです。
つまり「どう残すか」を考えることは、「今後どう経営するか」と表裏一体なのです。

2. 不動産経営と相続税対策は表裏一体

例えば、大家さんが新しくアパートを建てる時。

  • 借入をどう組むか
  • 誰に承継させるか
  • 将来の売却を見据えるか

これらはすべて相続税対策と直結しています。

また、収益物件を保有し続けるか、売却して現金化するかという判断も、単なる「経営判断」ではなく「相続対策」でもあるのです。

3. 戦略的に取り組む3つの視点

大家さんが相続税対策を「経営戦略」として考える上で、押さえるべき視点を3つご紹介します。

(1) 法人化によるスムーズな承継

個人で持っている不動産を法人に移すことで、将来の承継がスムーズになります。
法人の株式を相続すればよいため、不動産そのものを分ける必要がなく、分割のトラブルを減らすことができます。

ただし、法人化には税務や費用面のデメリットもあるため、税理士や専門家と一緒にシミュレーションすることが不可欠です。

(2) 生前贈与や建替えで資産を最適化

生前贈与は少しずつ資産を移していけるため、相続発生時の負担を減らすことができます。
また、古いアパートを建替えることで評価額を圧縮したり、収益力を高めたりすることも可能です。

「節税」だけにとらわれず、「次世代に渡したときに最適な形か」という視点が重要です。

(3) 借入を活用した事業的相続税対策

借入は「リスク」と思われがちですが、相続税評価においてはマイナス要素として働きます。
つまり、適切な借入を活用することで、資産評価を調整できるのです。

もちろん無理な借入は危険ですが、事業計画の中でうまく活用すれば、相続税対策と経営拡大を両立できます。

4. ケース紹介:経営戦略としての相続税対策成功例

あるオーナーさんは、所有していたアパートを法人に移し、同時に生命保険を組み合わせて承継計画を立てました。

  • 法人化で不動産そのものを分ける必要がなくなった
  • 株式の相続でスムーズに承継
  • 納税資金は生命保険で確保

結果として、家族間のトラブルもなく、承継後も法人が安定して経営を継続できました。

「節税目的」だけに走るのではなく、「経営を続ける」という視点を持ったことが成功の要因でした。

5. まとめ:大家業は「資産を育て、家族に残す事業」

今回の連載を通して、一貫してお伝えしたいのは次の点です。

  • 相続税対策は「税金を減らすため」ではなく「資産と家族を守るため」
  • 不動産を持つ大家さんだからこそ、相続でのリスクが大きい
  • 重要なのは節税テクニックよりも「準備の順番」と「家族との共有」
  • 相続税対策は不動産経営の延長線上にある「戦略」である

👉 相続対策を避けて通ることはできません。
しかし、前向きに取り組めば「家族に安心を残し、資産を守り、経営を次世代につなぐ」大きなチャンスでもあります。

✨ 最終回の締めに

この連載「大家さんのための相続税対策入門」は今回でひとまず区切りとなります。

私たち大家さん応援隊スタッフが願うのは、
「相続がトラブルではなく、家族の未来をつなぐきっかけになること」 です。

相続税対策は、一度にすべてを完璧にやる必要はありません。
今日からできる小さな一歩──「資産を見える化する」「家族と話す」「専門家に相談する」──を積み重ねるだけで、将来の安心は大きく変わります。

大家業は単なる投資ではなく、資産を育て、家族に残す事業です。
これからも一緒に、安心できる賃貸経営と資産承継を考えていきましょう。