大家さんのための相続税対策入門【第1回】

こんにちは。大家さん応援隊スタッフです。
今回から数回にわたり、大家さんや不動産投資家の方に向けて「相続税対策」をテーマに連載していきます。
不動産を所有している方にとって、相続は避けて通れない大きな問題です。
しかも「相続税」という税金は、日常生活ではなかなか実感しづらいものの、いざ発生すると莫大な金額になり得ます。

このテーマを取り上げた理由はシンプルです。
私はこれまで多くの大家さんや不動産投資家の方とお話ししてきましたが、相続については「まだ先の話だから」「自分は資産家じゃないから」と後回しにしているケースが非常に多いのです。ところが現実には、「準備不足が原因でせっかくの資産を守れなかった」という事例を数多く見てきました。
だからこそ、この連載では“難しい税務の話”というよりも、「なぜ相続税対策が必要なのか?」 という根源的な部分を、大家さん目線でわかりやすく解説していきたいと思います。

目次

  1. 今回の連載について
  2. 相続税対策は「税金対策」だけではない
  3. なぜ大家さんは特に相続税対策が必要なのか
    • 不動産は「評価額が高い」
    • 相続税は現金で払う必要がある
    • 財産が分けにくい=争いの火種になる
  4. 実際のケース紹介
    • 納税資金不足で物件を売却したケース
    • 相続トラブルで家族関係が壊れてしまったケース
  5. この連載で学べること
  6. まとめ:今日から考える第一歩

1. 今回の連載について

全5回を予定しており、それぞれテーマを分けて進めていきます。

  • 第1回:なぜ大家さんに相続税対策が必要なのか?(今回)
  • 第2回:そもそも相続税対策は必要なのか?
  • 第3回:大家さんがまずやるべき相続税対策3ステップ
  • 第4回:相続トラブルを防ぐための実践事例
  • 第5回:相続税対策を「不動産経営の戦略」として考える

勉強会や日々の経営の参考になるよう、できるだけ「現場感」と「リアルな事例」を交えながら進めていきます。

2. 相続税対策は「税金対策」だけではない

「相続税対策」と聞くと、多くの方は「節税テクニック」や「お金持ちだけの話」をイメージするかもしれません。
ですが本質は違います。

相続税対策とは、

  • 家族が安心して財産を受け継げるように準備すること
  • 不動産を守り、次世代につなげるための経営戦略

この2点に尽きます。

つまり、「税金を減らすための小手先の工夫」ではなく、大家さんの大切な資産を残すための仕組みづくり だと考えてください。

3. なぜ大家さんは特に相続税対策が必要なのか

大家さんにとって相続は一般家庭以上に大きなテーマです。その理由を3つ挙げます。

(1) 不動産は「評価額が高い」

不動産の相続税評価は「購入価格」ではなく「路線価」や「固定資産評価額」で計算されます。
例えば、都内の土地を1億円で購入した場合、評価額は8,000万円以上になることもあります。現金や預金と違って、自分の実感以上に課税対象が膨らむのです。

(2) 相続税は現金で払う必要がある

不動産をたくさん持っていても、それ自体では税金を支払えません。
現金が足りないと、相続人は「物件を売る」か「借金をして納税する」しかなくなります。せっかく安定収益を生む物件も、納税のために手放すことになるのです。

(3) 財産が分けにくい=争いの火種になる

現金なら「3人兄弟で3分割」できますが、不動産はそうはいきません。
「兄は土地、妹はアパート」という割り方をすれば、収益や価値の差で不満が出ます。その結果、兄弟が仲違いする「争族(そうぞく)」に発展することも珍しくありません。

4. 実際のケース紹介

ここでは、私が実際に見聞きした事例を簡単ですが 2つご紹介します。

ケース1:納税資金不足で物件を売却

都心の駅近アパート・マンションを複数所有している大家さんのお話です。安定した家賃収入もあり、「相続税なんて自分には関係ない」と考えていたそうです。
ところがいざ相続が発生すると、課税評価額は想定以上に大きく、数千万円の相続税が発生しました。
子どもたちは現金を持っていなかったため、泣く泣くアパートを売却。結果的に「守るべき財産」を手放すことになってしまいました。

ケース2:相続トラブルで家族関係が崩壊

別の大家さんは、遺言書を残さずに他界しました。
複数の不動産を持っていましたが、「誰がどの物件を引き継ぐか」で兄弟が対立。感情的な争いとなり、最終的に調停にまで発展しました。
相続税以上に「家族の絆」が失われたケースです。

5. この連載で学べること

今回の連載を通じて得られるのは、以下のような視点です。

  • 相続税対策=節税ではなく「財産を残す準備」であること
  • 大家さんにとって不動産は相続のリスクになりやすいこと
  • 事前に準備することで「資産」も「家族」も守れること

6. まとめ:今日から考える第一歩

相続は「まだ先」と思っていても、いつ起こるかわかりません。
そして不動産を持つ大家さんにとっては、一般家庭以上に準備不足が大きなリスクとなります。

👉 今日からできる第一歩は、

  • 自分の資産が「基礎控除額」を超えるかどうか確認すること
  • 家族と「どう資産を残したいか」を話し合うこと

この2つです。

次回は、「そもそも相続税対策は本当に必要なのか?」 をテーマに掘り下げていきます。
自分には関係があるのか? それとも不要なのか? 明確な判断基準を整理していきましょう。