大家さんのための相続税対策入門【第4回】

こんにちは。大家さん応援隊スタッフです。

これまでの連載では、

  • 第1回:「なぜ大家さんに相続税対策が必要なのか?」
  • 第2回:「そもそも相続税対策は本当に必要なのか?」
  • 第3回:「大家さんがまずやるべき相続税対策の3つの行動」

と、基本的な考え方から最初の実践ステップまでを整理してきました。

今回の第4回では、もう少しリアルなテーマに踏み込みます。
それが 「相続トラブルを防ぐための実践事例」 です。

なぜこのテーマを取り上げるのかというと、実は「税金そのもの」以上に、大家さんを悩ませるのは相続人同士のトラブルだからです。
納税資金が確保できても、財産の分け方でもめれば、家族関係に亀裂が入ります。最悪の場合、せっかくの財産がトラブルの火種になってしまうのです。

そこで今回は、典型的な失敗事例と、それを防ぐための工夫をご紹介します。

目次

  1. なぜ大家さんに相続トラブルが起きやすいのか
  2. よくある相続トラブル事例3選
    • 共有名義での混乱
    • 遺言書がなかったケース
    • 子どもに情報を伝えていなかったケース
  3. トラブルを防ぐための3つの工夫
  4. 実際にトラブルを回避した成功事例
  5. まとめ:相続対策は「家族の安心」を残す準備

1. なぜ大家さんに相続トラブルが起きやすいのか

相続トラブルはどの家庭でも起こり得ますが、特に大家さんや不動産投資家に起こりやすい理由があります。

  • 不動産は分けにくい資産:現金のように簡単に分割できない。
  • 資産の評価が人によって違う:「この土地は価値が高い」「いや収益が低い」など主観が入りやすい。
  • 収益物件は管理も必要:相続した後も手間やリスクがあるため、誰が継ぐのかで揉めやすい。

つまり「数字の問題」だけでなく「感情の問題」が絡みやすいのです。

2. よくある相続トラブル事例3選

(1) 共有名義での混乱

親が「平等に分けてあげたい」という思いから、不動産を子どもたちの共有名義にするケースがあります。
一見平等に見えますが、実際には問題の温床です。

  • 売却や修繕の意思決定に全員の同意が必要
  • 一人でも反対すると動けなくなる
  • 結果として物件が放置され、収益も落ちる

この「共有トラブル」は非常に多いパターンです。

(2) 遺言書がなかったケース

大家さんが元気なうちは「うちは大丈夫だろう」と思いがちですが、遺言書がなければ相続人全員で分け方を話し合う必要があります。
ここで意見が食い違い、話し合いが泥沼化することも。
遺言書は「家族の指針」となる大切なツールなのです。

(3) 子どもに情報を伝えていなかったケース

「相続なんてまだ先だ」と考え、子どもに資産の情報を伝えていない大家さんも多いです。
しかし、いざ相続が発生すると、

  • どこに土地があるのか
  • どの銀行に口座があるのか
  • 借入がいくら残っているのか

が分からず、手続きがストップすることがあります。
結果的に納税期限に間に合わず、延滞税が発生してしまうケースもあるのです。

3. トラブルを防ぐための3つの工夫

では、どうすればこうしたトラブルを未然に防げるのでしょうか。

  1. 遺言書を作成する
    → 自筆証書遺言でも良いですが、公正証書遺言なら法的効力が確実。
  2. 家族信託を活用する
    → 子どもに資産の管理・承継をスムーズに任せられる仕組み。
  3. 資産の情報共有をしておく
    → 「資産一覧表」を家族に伝えておく。これだけで大きな混乱を防げます。

「税金を減らす」以前に、まずは家族にわかりやすく伝える工夫が必要です。

4. 実際にトラブルを回避した成功事例

成功事例1:遺言書を残したことでスムーズに承継

ある大家さんは、まだ元気なうちに公正証書遺言を作成しました。
「長男がアパートを継ぎ、次男には生命保険で現金を渡す」と明記しておいたおかげで、相続後は揉めることなくスムーズに手続きが進みました。

成功事例2:資産一覧を事前に共有

別の大家さんは、Excelで「資産一覧表」を作り、家族に渡していました。
その結果、相続発生後の手続きが非常にスムーズで、納税も期限内に問題なく完了。家族も「お父さんが準備してくれていて助かった」と感謝していたそうです。

5. まとめ:相続対策は「家族の安心」を残す準備

今回のポイントを整理すると、

  • 大家さんに相続トラブルが多いのは「不動産が分けにくいから」
  • よくある失敗は「共有名義」「遺言書なし」「情報不足」
  • 防ぐためには「遺言書」「家族信託」「情報共有」がカギ
  • 成功の秘訣は「事前の準備」と「家族への見える化」

👉 相続税対策というと「税金を減らすこと」に注目しがちですが、実際に重要なのは「家族を争いから守ること」です。

次回の第5回では、いよいよ最終回。
「相続税対策を不動産経営の戦略として考える」 をテーマに、節税・承継・資産形成を総合的に捉える視点をご紹介します。


✍️ 相続税対策は「財産を残す準備」であると同時に、「家族の安心を残す準備」でもあります。ぜひ一歩ずつ進めてみてください。