大家さん三大不安を読み解く〜相続対策の先にあるリアルな悩み〜
こんにちは。大家さん応援隊スタッフです。
これまでの記事では、「相続税対策の必要性」についてじっくりお話ししてきました。
賃貸経営を続ける上で、相続は避けて通れない大きなテーマですし、早めに準備しておくことで家族への負担を軽減できることは間違いありません。
しかし、大家さん・不動産投資家の方々と日々お話を重ねていく中で、もう一つ見えてきた現実があります。
それは、「相続の前に、もっと切実な“今”の悩みがある」ということです。
どれだけ相続対策を万全にしても、肝心の賃貸経営そのものが不安定では本末転倒です。
そして、多くの大家さんが共通して抱えている“いまこの瞬間”の悩みを整理すると、ある3つの柱に集約されることが分かってきました。
それが、私たちが呼んでいる 「大家さん三大不安」 です。
三大不安とは何か?〜すべての大家さんに共通する悩み〜
この三大不安は、私たちが長年の相談経験の中で特に多く寄せられているものを整理したものです。
それが次の3つです。
- ① 空室が埋まらない不安
- ② 修繕・原状回復など予想外の出費への不安
- ③ 金利上昇・融資環境悪化への不安
いずれも「賃貸経営の根幹」に関わる重大なテーマであり、ひとつでも対応を誤るとキャッシュフローや今後の投資計画に大きな影響を与えます。
そして重要なのは、これらがどのオーナーにも共通する普遍的な悩みであるという点です。規模の大小やエリア、築年数を問わず、大家業をしていれば必ず直面する課題と言っても過言ではありません。
では、それぞれの不安の内容と背景を少し詳しく見ていきましょう。
① 空室が埋まらない不安〜賃貸経営の“永遠のテーマ”〜
まず、最も多くの大家さんが口をそろえて挙げるのが「空室問題」です。
空室は、家賃収入という大家業の生命線に直結しており、経営の安定を大きく左右します。
- 「繁忙期でもなかなか決まらない部屋がある」
- 「広告費を増やしても反応が薄い」
- 「築20年を過ぎた頃から急に入居スピードが落ちた」
こうした声は決して珍しいものではありません。
しかもこの問題は、少子高齢化による人口減少、供給過多による競争激化、入居者ニーズの変化などの影響で、今後ますます深刻になると予想されています。
賃貸経営において「空室ゼロ」を永続的に維持することは理論的に不可能です。入居者は必ず退去しますし、周辺環境や競合状況は刻々と変化します。
だからこそ重要なのは、「空室をゼロにすること」ではなく、いかに短期間で埋め、発生頻度を抑えるかという戦略です。
入居者ターゲットの再定義や募集条件の見直し、内見時の印象改善、仲介会社との連携強化など、取り組むべきポイントは多岐にわたります。
この「永遠のテーマ」にどう向き合うかが、賃貸経営者としての腕の見せどころです。
② 修繕・原状回復など“想定外の出費”への不安
次に多いのが、突発的な修繕や原状回復費用への不安です。
賃貸経営をしていると、ある日突然、想定外の支出が発生することがあります。
- 「給湯器が壊れて交換費用が40万円かかった」
- 「退去時の原状回復費用が思ったより高額だった」
- 「外壁工事や屋上防水など、大規模修繕の時期が重なってしまった」
こうした“突発コスト”は、時として家賃収入の数ヶ月分を一気に吹き飛ばす破壊力を持っています。
これを防ぐ最善の方法は、「突然に慌てない仕組み」を日頃から整えておくことです。
たとえば、長期修繕計画を立てて修繕積立金を毎月積み立てておくことや、複数社から見積もりを取り比較検討すること。
また、火災保険・設備保険などを適切に活用することでも大きな違いが出ます。
ポイントは、“予測できない出費”を“予測できるリスク”に変えることです。
「想定外」を「想定内」に変えることができれば、たとえ支出が発生しても経営全体が揺らぐことはありません。
③ 金利上昇・融資環境の悪化への不安〜数字が経営を左右する時代〜
そして3つ目は、「金利」と「融資」に関する不安です。
ここ数年、金融政策の転換により金利の先行きが読みにくくなっています。
特に変動金利でローンを組んでいる大家さんにとって、「もし金利が上がったら返済は大丈夫なのか?」という不安は年々大きくなっています。
- 「金利が上がったらキャッシュフローが回らないかもしれない」
- 「返済比率が高く、新規投資ができない」
- 「追加で買いたい物件があるのに融資が通らない」
こうした声が増えています。
賃貸経営は、物件運営だけでなく“金融戦略”でも勝敗が決まる時代です。
金利が1%上がるだけで手残りが数十万円単位で変わることも珍しくありません。
大切なのは、「金利が上がったらどうなるか」を事前にシミュレーションしておくことです。
さらに、銀行との信頼関係を築き、リファイナンス(借り換え)や返済計画の柔軟な見直しなど、選択肢を広げておくことも重要です。
三大不安は連鎖する 〜一つの対策が全体を変える〜
この三大不安は、それぞれが独立しているようでいて、実は深く結びついています。
たとえば、空室が増えると家賃収入が減り、修繕費やローン返済の資金が圧迫されます。
突発的な修繕が続くとキャッシュフローが悪化し、融資審査が厳しくなる可能性があります。
金利が上がれば家賃収入の余力が減り、修繕や空室対策にかけられる予算が縮小する——このように、一つの問題が別の問題を呼び込む構造が存在するのです。
だからこそ、三大不安は「別々に対処する」のではなく、全体像としてとらえ、バランスよく備えることが重要です。
まとめ:三大不安と向き合うことが、賃貸経営の次の一歩
相続対策は、賃貸経営を長期的に続けるうえで欠かせないテーマです。
しかし、「いま目の前にある不安」を放置したままでは、いくら未来の準備をしても安定した事業基盤は築けません。
今回ご紹介した三大不安は、すべての大家さんが通る道です。
避けることはできませんが、理解して備えることで“リスク”から“管理可能な課題”に変えることができます。
次回からは、この三大不安を一つずつ掘り下げ、より具体的な事例と解決策をお伝えしていきます。
まずは「空室対策」から。賃貸経営の“永遠のテーマ”とも言える空室問題を、原因の構造と実践的な対策の両面から詳しく解説しますので、ぜひ次回もご期待ください。
📍次回予告
▶︎ 第1回:「空室が埋まらない…賃貸経営最大の壁とその突破口」
〜空室対策の本質を理解すれば、入居率は必ず上がる〜