大家さん・不動産投資家が最低限知っておくべき「8つのリスク」と“あなたにとって”優先すべき対策とは?

不動産賃貸業は「安定収入が得られる資産運用」として人気がありますが、成功の裏には見えづらい“リスク”がつきものです。家賃収入が途絶えたり、突発的な修繕費が発生したり、制度変更で税金が跳ね上がったり……。これらは事前に把握・対策しておくことで、多くを回避できます。

今回は、大家さん・不動産投資家が”最低限知っておくべき8つのリスク”を整理し、さらに「人によって異なる優先リスク」についても掘り下げてご紹介します。

◆ まずは押さえるべき「基本の8大リスク」

  1. 空室リスク
    入居者が決まらず、家賃収入が得られない状態。長期空室になるとローンや固定費だけが出ていき、キャッシュフローが一気に悪化する。立地、家賃設定、内装、設備、募集戦略など、多角的な改善が必要。
  2. 家賃滞納リスク
    入居者が家賃を支払わない、あるいは遅延を繰り返すことで、経営の安定が損なわれる。保証会社を使っていない場合は債権回収の負担も大家にのしかかり、精神的にも大きなストレスとなる。
  3. 建物・設備の老朽化リスク
    経年による劣化で、屋根・外壁・給排水・内装などの不具合が発生。放置すればクレームや事故の原因に。突発的な修繕は費用も高額になるため、長期修繕計画と予防的メンテナンスが不可欠。
  4. 災害リスク
    地震・火災・風水害などの自然災害により、建物の破損や居住不能になるケースも。入居者退去、修繕、保険請求など多くの手間と損失が生じる。適切な保険加入と事前の備えが経営を守る鍵。
  5. 法制度・税制変更リスク
    インボイス制度や固定資産税見直し、相続税改正など、法改正によって収支や運営方針が大きく左右される。小さな変更でも長期的な影響は大きく、制度に関する情報収集と専門家相談が不可欠。
  6. 管理リスク
    管理会社への過信や、自主管理における対応漏れがトラブルの原因になる。入居者対応、清掃、クレーム、更新業務など、管理品質が物件価値や入居者満足度に直結するため、日頃のチェックが重要。
  7. 流動性リスク
    不動産は現金化に時間がかかり、急な資金ニーズに応えられない。地方や築古物件では特に買い手が見つからず、売却価格も希望に届かないことが多い。事前に出口戦略や資産構成の見直しが必要。
  8. 相続・贈与リスク
    不動産は分割しづらく、遺産分割で揉めやすい資産。相続税評価額が高くなると納税資金の捻出が難しくなる。名義の整理や法人化、生前贈与などを活用し、早めの対策で次世代への円滑な承継を図る。。

◆ 今すぐ対応すべき「優先リスク3選」

これら8つのリスクはとても重要なことなので、すぐにでも取り組んでいかなければならないことです。そんな中で最も多くの大家さんが最初に対策すべきものは次の3つです。ではご紹介していきます。

✅ 1. 空室リスク

入居者がいない限り収益はゼロ。ローンや固定費は出ていく一方です。

対策例:

  • 募集条件や家賃設定の見直し
  • リフォーム・設備改善による差別化
  • 管理・仲介会社の再選定や多チャネル化
✅ 2. 家賃滞納リスク

表面上は満室でも、実質的な“未収”が積もるとキャッシュフローが危うくなります。

対策例:

  • 保証会社の導入を標準化
  • 審査基準の整備と入居者属性の分析
  • 滞納時の対応マニュアルの構築
✅ 3. 法制度・税制変更リスク

特に2023年に導入されたインボイス制度は、多くの免税事業者にも影響しています。

対策例:

  • 自身が課税事業者か免税事業者か確認
  • 税理士と今後の対応を協議
  • 制度変更に伴う収益影響のシミュレーション

◆ 「人によって違うリスク」とは?タイプ別に見る具体例

大家さんと一口に言っても、背景や物件状況は千差万別です。以下のようにタイプ別にリスクの優先度は大きく変わってきます。次のようなタイプ別(例)にご紹介していきます。

🧑‍💼 タイプ①:築20年前後の住居系アパートを運用中の現役大家
  • 木造アパート2棟(東京郊外、全16戸)、築18年・築24年
  • 家賃収入:約1,500万円
  • 管理:管理会社に委託(家賃集金・入居募集)
  • 主な懸念:空室の長期化、家賃下落、設備トラブル

優先リスク

  1. 空室リスク
  2. 家賃滞納リスク
  3. 老朽化リスク(修繕積立の必要性)
👴 タイプ②:地主系の高齢ベテラン大家(相続対策段階)
  • RC造マンション1棟(都内城南地区、15戸)、相続評価が高い
  • 家賃収入:約2,800万円
  • 相続税対策に不安あり。息子に継がせるか、法人化か悩み中。

優先リスク

  1. 相続・贈与リスク
  2. 法制度変更リスク(特例廃止・税制改正など)
  3. 管理リスク(将来の継承者が運営できる体制づくり)
👨‍💻 タイプ③:地方中古アパート投資家(築古・高利回り型)
  • 地方主要都市に築30年以上の木造アパート3棟
  • 借入比率が高く、空室や修繕でキャッシュが圧迫気味
  • 原状回復や給湯器トラブルが毎年のように発生

優先リスク

  1. 老朽化・突発修繕リスク
  2. 流動性リスク(出口戦略の難しさ)
  3. 空室リスク(入居付けに苦戦)

◆ まとめ

自分の状況に合わせたリスク対策こそが“勝ち残る鍵”

不動産賃貸経営は「持っているだけ」で成り立つ時代ではありません。特に最近は制度変更や物価上昇など、大家を取り巻く環境も大きく変化しています。

だからこそ重要なのは、自分の物件構成・年齢・家族構成・運営スタイルに合わせて

✔ どのリスクが自分にとって最も致命的か?
✔ 何から優先して対策すべきか?

を見極め、早めに手を打つことが重要です。

※ご紹介した内容(タイプ別)はこれまで相談を受けた中から一部変更してご紹介しています。