【なぜ不動産投資家・大家さんは数棟の物件を買い続けるのか?】合理的な背景と成長戦略を解説

不動産投資の世界では、一棟目の購入は大きな一歩といわれます。
しかし、その後の投資家の動きを見ると、1棟だけで満足する人はむしろ少数派です。

不思議だと思いませんか?

成功している投資家ほど、次々と物件を購入し、気づけば5棟、10棟と着実に規模を拡大しています。

「なぜそこまで物件を買い増すのか?」
「そんなに所有して管理は大変ではないのか?」

この疑問に対して、感覚的な欲求や見栄といった表面的な答えではありません。
実はそこには、極めて合理的な理由と資産形成の明確な戦略が存在しているのです。

今回は、不動産投資家や大家さんが物件を買い続ける背景と狙いについて、体系的にわかりやすく解説します。

1. 単棟依存のリスクを避け、安定収益を実現するため

不動産投資の基本は、毎月安定した家賃収入を得ることにあります。
そのため、収益のブレを最小限に抑える工夫が欠かせません。

ところが、物件を1棟だけ保有している場合、以下のようなリスクが集中してしまいます:

  • 突然の空室発生により家賃収入が途絶える
  • 大規模修繕が発生し、一時的に大きな支出が必要になる
  • 地域需要の変化で入居が鈍化し、収益が長期低迷する

こうした「単棟依存」の状態は、収益面で非常に不安定な状況を生み出しかねません。

そこで、投資家は複数棟を保有してリスクを分散する戦略をとります。

  • 物件所在地を複数エリアに分ける
    → 地域特有のリスクを緩和
  • 物件タイプを多様化(単身・ファミリー・商業用など)
    → 入居ニーズの偏りを回避
  • 融資先金融機関を分散
    → 金融リスクのヘッジ

結果として、仮に1棟で空室が発生したり想定外の出費が生じても、他の物件からの収益で全体をカバーできる体制を築けるのです。

2. 規模を拡大してスケールメリットを享受する

不動産投資は「規模の経済」が強く働く領域でもあります。
複数棟を保有することで、コスト削減と資金調達の面で大きな優位性が生まれます。

■ 管理コストの削減

1棟だけの管理委託では、管理費率や対応内容に関してあまり交渉力がありません。
しかし、複数棟を同一の管理会社に委託している場合、ボリュームディスカウント対応面での優遇を引き出しやすくなります。

■ 金融機関からの信用向上

不動産投資において資金調達は重要な要素ですが、金融機関は融資実績や経営状況を重視します。

1棟の保有時は「初心者」として見られがちですが、2棟・3棟と着実に実績を積み上げることで「経験ある事業者」として評価が高まる
その結果、融資枠の拡大や金利優遇など、次の物件購入が有利に進められるようになるのです。

■ 法人化による税務戦略の高度化

一定規模を超えると法人化が有効な選択肢となります。
法人を活用することで:

  • 所得分散による所得税の最適化
  • 退職金制度の活用
  • 家族を役員に登用し給与を支給

といった高度な税務戦略が実現可能になります。
これにより実質手取りを大幅に増やすことができるため、投資家は意欲的に規模拡大を目指すのです。

3. レバレッジ効果を最大化し資産成長サイクルを加速させる

不動産投資の大きな魅力の一つは、レバレッジ(借入)を活用できることです。

自己資金だけでは購入できない規模の資産でも、銀行融資を活用すれば数倍〜10倍近い規模の物件を取得可能になります。

さらに、保有している物件のローン返済が進むにつれて、自己資本が着実に増加していきます。
この自己資本の蓄積が次の物件の頭金となり、資産拡大の好循環を生み出すのです。

また、保有期間中に:

  • 土地価格の上昇
  • 家賃相場の上昇
  • 再開発や用途変更による価値向上

といった資産価値の向上(キャピタルゲイン)を享受できる機会も増えていきます。
複数棟を所有することで、こうした機会がより頻繁に訪れるのも大きなメリットです。

4. インフレ対策・資産保全の観点も重要

近年、インフレが現実のリスクとして意識されるようになってきました。
現金資産はインフレ下で実質価値が目減りしていくという問題を抱えています。

その一方で、不動産はインフレに強い資産といわれます。

  • 家賃がインフレとともに上昇しやすい
  • 土地は実物資産として価値が保たれやすい
  • 不動産は実態のある「モノ」として残り続ける

特に複数棟保有することで、インフレ時に収益面・資産価値面の防御力がさらに高まるのです。

また、相続税対策としても不動産は活用されます。
土地・建物は相続税評価が実勢価格より低めに算定されるため、評価圧縮効果を得られるメリットも大きい。
複数棟保有によって、資産承継の選択肢が広がるという側面も見逃せません。

5. 成功体験が意欲を生み、さらなる成長の原動力に

最後に、投資家の心理的な側面も重要な要素です。

1棟目の購入は誰にとっても大きな挑戦ですが、成功体験を得た瞬間に「次もチャレンジしたい」という意欲が生まれます

  • より好条件で融資が引けた
  • 管理の工夫で収益性が改善した
  • 知見が深まり物件選定の目が養われた

こうした経験を積み重ねることで、自己成長の実感が大きな原動力になるのです。

また、家賃収入が次の物件の投資原資を自然に生み出すこともあり、拡大サイクルが加速する構造も整ってきます。

一種の「投資家としてのゲーム化」が起きることも珍しくありません。
成功体験が自信を生み、さらなる挑戦につながっていく。
このポジティブループが、数棟買い続ける投資家の姿を形作っているのです。

まとめ

不動産投資家・大家さんが数棟の物件を買い続ける背景には、極めて合理的な戦略と成長のステップが存在します。

  • 単棟依存のリスク分散
  • スケールメリットの享受
  • レバレッジ効果による資産成長の加速
  • インフレ対策・相続税対策
  • 成功体験による自己成長と意欲の強化

こうした要素が複合的に作用することで、投資家は意欲的に物件を増やしていくのです。

もしあなたが不動産投資を長期的に取り組もうと考えているなら、「なぜ複数棟を目指すのか」という観点を意識して、戦略的に取り組んでいくことをおすすめします。

着実な一歩一歩が、やがて強固で安定した資産形成につながるはずです。