大家さんのための相続税対策入門(第2回)

こんにちは。大家さん応援隊スタッフです。
前回の第1回では、大家さんにとって「なぜ相続税対策が必要なのか?」という根本的な問いを取り上げました。今回はもう一歩踏み込み、「そもそも相続税対策は本当に必要なのか?」について考えていきます。
なぜこのテーマを取り上げるのかというと、多くの大家さんから「相続税なんて自分には関係ない」「資産家だけの問題でしょ?」という声をよく耳にするからです。ですが、実際に数字を当てはめてみると「意外と自分も対象になる」と気づくケースが非常に多いのです。
今回はその“境目”を具体的に整理し、「対策が必要な人・不要な人」をわかりやすくご紹介します。
連載について
全5回を予定しております。
- 第1回:なぜ大家さんに相続税対策が必要なのか?
- 第2回:そもそも相続税対策は必要なのか?(今回)
- 第3回:大家さんがまずやるべき相続税対策3ステップ
- 第4回:相続トラブルを防ぐための実践事例
- 第5回:相続税対策を「不動産経営の戦略」として考える
目次
- 相続税がかかる人とかからない人の境目
- 基礎控除額の仕組みを知ろう
- 相続税対策が必要なケース
- 相続税対策が不要なケース
- 「必要・不要」を見極めるためのチェックリスト
- まとめ:節税よりも「準備」の視点を
1. 相続税がかかる人とかからない人の境目
相続税は、すべての人にかかる税金ではありません。
では、どこが境目になるのでしょうか?
その答えはズバリ 「基礎控除額」 にあります。
この金額を超える財産を持っていると相続税が発生し、下回っていれば相続税はかかりません。
ただし、注意すべきは「不動産を所有している人は、意外とこの基礎控除を超えやすい」という点です。
都市部の土地や賃貸アパートを持っている大家さんは、実感以上に評価額が大きくなっていることが多いのです。
2. 基礎控除額の仕組みを知ろう
基礎控除額は次の式で計算されます。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
例えば:
- 相続人が配偶者と子ども 2人の場合
→ 3,000万円 + 600万円×3人 = 4,800万円
つまり、このケースでは 4,800万円までの財産なら非課税 ということです。
ところが、土地やアパートを持っている場合、評価額がすぐにこの金額を超えてしまいます。
- 都内の小さな土地でも路線価評価で5,000万円
- アパート1棟の評価が6,000万円以上
こうしたケースは珍しくありません。
3. 相続税対策が必要なケース
次のような方は、相続税対策を「やるべき人」です。
- 総資産が基礎控除額を明らかに超えている
- 都市部に土地やアパートを所有している
- 賃貸経営をしていて、物件を売らずに子どもに残したい
- 家族の人数が少なく(相続人が少ない)、基礎控除額が小さい
こうした場合、相続税が数千万円単位になる可能性もあります。
もし準備をしていなければ、納税のために物件を売却したり、借金を背負うことになるかもしれません。
4. 相続税対策が不要なケース
一方で、次のような方は「積極的な相続税対策をしなくても大丈夫」です。
- 総資産が基礎控除額を大きく下回る
- 不動産を所有しておらず、現金や金融資産が中心で分割しやすい
- 子どもがいない、あるいは相続人が多くて基礎控除額が大きい
ただし注意したいのは、「相続税はかからなくても、遺産分割の問題は起きる可能性がある」ということ。
つまり「税金対策は不要でも、分割や承継の準備は必要」ということです。

5. 「必要・不要」を見極めるためのチェックリスト
最後に、ご自身がどちらに当てはまるかを見極めるための簡単なチェックリストをご紹介します。
□ 都市部に土地を持っている
□ アパートやマンションを所有している
□ 総資産をざっくり計算すると5,000万円を超える
□ 相続人が配偶者と子ども1人(=基礎控除額が4,200万円と小さい)
□ 「残したい資産」と「現金」のバランスが悪い
この中で2つ以上チェックがついた場合は、相続税対策を前向きに検討すべき人です。
6. まとめ:節税よりも「準備」の視点を
今回のポイントを整理します。
- 相続税がかかるかどうかの境目は「基礎控除額」
- 都市部の不動産を持つ大家さんは、意外と課税対象になりやすい
- 「対策が不要」な人も、分割や承継の準備は欠かせない
- 大事なのは「節税テクニック」ではなく「家族に残す準備」
👉 相続税対策は「やる・やらない」の白黒ではなく、自分の状況に応じた準備の程度を調整することが大切です。
次回の第3回では、大家さんが「まずやるべき相続税対策 3ステップ」を具体的に紹介します。
節税の前に「何から始めればいいのか?」を一緒に整理していきましょう。